写真は芦屋浜。背景は東神戸大橋と六甲山地。
これより東海道本線に還りて、大阪湾の北岸を神戸に向ふ。
蘆屋駅所在地。(水垣注:現在は「芦屋」と書く。)
いさり火の昔の光ほのみえて蘆屋の里に飛ぶ蛍哉
あしや潟海松みる拾ふ子にこととはん眉ひきたるや紀路の遠山
水垣注:蘆屋(芦屋)は和歌では侘しげな旅泊地として詠まれることが多かった。「蘆屋」は蘆で編んだ粗末な仮小屋をも意味したからである。また業平がこの地で詠んだ歌(初出は伊勢物語)により蛍の名所ともされた。
葦の屋の菟原処女うなひをとめの奥つ城きを行き来くと見れば哭ねのみし泣かゆ
蘆の屋のなだの塩焼いとまなみ黄楊つげの小を櫛もささず来にけり
晴るる夜の星か川辺の蛍かも我がすむかたに海人のたく火か
はるかなる芦屋の沖のうき寝にも夢路はちかき都なりけり
ながめやる心のはてぞなかりける芦屋の沖にすめる月影
芦の屋に蛍やまがふ海人やたく思ひも恋も夜はもえつつ
ほのぼのと我がすむかたは霧こめて芦屋の里に秋かぜぞ吹く
いつもかくさびしきものか津の国の芦屋の里の秋のゆふぐれ
芦屋潟波のいづくもあらはれて夕日にかへる沖のつり舟
立ちまがふ蘆屋の里の夕がすみ花に宿とふ行方のみかは
波のうへに月かたぶけば浦千鳥とぶかげうつる芦の屋の窓