白氏文集卷五十三 閑臥
2011-01-29


禺画像]

閑臥   白居易

盡日前軒臥  尽日(じんじつ)軒を前に臥(ふ)し
神閑境亦空  神(こころ)閑(しづ)かに境(きやう)も亦(ま)た空(くう)なり
有山當枕上  山の枕上(ちんじやう)に当つる有り
無事到心中  事の心中(しんちゆう)に到る無し
簾卷侵床日  簾(すだれ)巻かれ 床(とこ)を侵(おか)す日
屏遮入座風  屏(へい)遮(さへぎ)る 座に入(い)る風
望春春未到  春を望むも春未(いま)だ到らず
應在海門東  応(まさ)に海門(かいもん)の東にあるべし

【通釈】一日中、軒に向かって寝床に臥し、
心しずかに、空の境地にある。
枕もとにちょうど山が望まれる。
心中、雑事に煩わされることは無い。
捲き上げた簾から、寝床に日が射し込み、
部屋に吹き入る風は、屏風が遮ってくれる。
待ち望む春はまだ到らない。
今ごろ海峡の東に来ているだろう。

【語釈】◇海門 陸地に挟まれた海の通路。瀬戸。海峡。

【補記】長慶三年(823)、五十二歳、抗州での作。「望春春未到 応在海門東」を句題に慈円・定家が歌を詠んでいる。

【影響を受けた和歌の例】
みちのくや春まつ島のうは霞しばしなこその関路にぞ見る(慈円『拾玉集』)
清見潟あけなむとする年なみの関戸の外に春や待つらん(藤原定家『拾遺愚草員外』)</

[和歌に影響を与えた漢詩文]

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