佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』東海道線12 宇津谷峠〜引佐細江
2015-02-23


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広重画保永堂版大錦東海道五十三次より日坂(佐夜の中山)

宇津谷峠

静岡より焼津に到る間にある山。

在原業平

駿河なる宇津の山辺のうつゝにも夢にも人にあはぬなりけり

藤原定家

宇津の山わが行くさきも程遠き蔦の若葉に春雨ぞふる

宗尊親王

茂りあふ蔦も楓も紅葉して木陰秋なる宇津の山越

香川景樹

夢さめて夢かとぞ思ふうつの山ふもとの里に旅寝してけり

熊谷直好

宇津の山うつゝか夢か春の夜の月はかすみて花はちりつゝ

東花子

蔦分けて越えしは昔夢の間にうつの山をぞ過はてにける

大井川

島田金谷の間を流る。

冷泉為相

波よりも秋や立つらむ大井川わたる瀬ごとに風ぞすゞしき

春山繁樹

長橋を汽車くるまはすぎぬ川どめの昔を子らに語りをる間に

菊川

金谷駅の近傍。往古の宿駅。

藤原俊基

いにしへもかゝるためしをきく川の同じ流に身をや沈めむ

武女

今も猶かやが軒端に雨もりて昔おぼゆる菊川の宿

小夜の中山

掛川の附近。

西行

年たけて又越ゆべしとおもひきや命なりけり小夜の中山

武女

年はまだ三十ぢがほどに行くと来くと八度こえけりさよの中山

天龍川

水源は遠く信州の諏訪湖よりいづ。古く天の中川といへり。

賀茂真淵

諏訪の海や氷とくらし遠つあふみ天あめの中川みぎはまされり

高田相州

久方の天の中川くだしくる筏の上にのこる白雪

東一雄

水上の山なみ消えて夕立の雨うちけぶる天の中川

浜松

市の西郊伊場村は賀茂真淵が出生の地。市の附近は古への引馬野なり。

長奥麿

引馬野に匂ふ榛はり原入りみだり衣にほはせ旅のしるにし

式子内親王

かり衣乱れにけりな梓弓曳馬(ひくま)の野べの萩の朝露

県居霊社に詣でて
高木真藤

宮古りて人かげもなき寒き日を老松のうれに小鳥声する

浜名湖

湖口に弁天島あり。

藤原家良

朝ぼらけはまなの橋はとだえして霞を渡る春の旅人

高田相川

絵巻物みるこゝちしつ初春の浜名の湖うみの白帆ましら帆

伏屋寒梅

みどり濃き岸のまつ原南吹きて浜名大うみ雨細うふる

引佐いなさ細江

浜名湖の奥の細江。

香川景樹

旅にして誰にかたらむとほつあふみいなさ細江のはるの曙

石松東雄

遠つあふみいなさ細江の秋風に月影寒く芦の花散る

児山信一

絵のごとく目にさやかなり色深き引佐細江の初夏の水

補録

宇津谷峠

鴨長明

袖にしも月かかれとは契りおかず涙は知るや宇津の山ごえ

藤原忠良

嵐吹く高嶺の雲をかたしきて夢路も遠し宇津の山越え

藤原定家

都にもいまや衣をうつの山夕霜はらふ蔦の下道

順徳院

駿河なる宇津の山べにちる花よ夢のうちにもたれ惜しめとて

頓阿

暮るるまで嵐に越ゆる宇津の山さぞな今宵も夢は見ざらむ

飛鳥井雅世

昔だに昔といひし宇津の山こえてぞしのぶ蔦の下道

心敬

うつの山つたの葉もろき秋風に夢路もほそきあかつきの空


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[和歌名所めぐり]

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