うかひ舟今はほかにはながら河むかしを見する篝火の影
悲しくも鵜舟さすなり長柄川ながらへはてぬこの世と思ふに
かゞり火の光にみれば長良川うの羽の色もさやけかりけり
多度川の滝を清みか古ゆ宮仕へけむ多藝たぎの野の辺に
養老瀑布見に物して岩根に腰かけなどしつつあたり見めぐらすに、なべて人げんの世かいはなれたるやうにおぼえらる
こくたちし人かあらぬか岩ばしる滝よりおくに薪こるおと
不破の関朝こえゆけば霞たつ野上のかたに鶯ぞなく
おもひこし不破の関屋の旅寝かなぬるともよしや夕暮の雨
秋をへて色にぞみゆる伊吹山もえて久しき下の思ひも
伊吹山いぶく朝風吹きたえてあふみは霧の海となりぬる