佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大和紀伊方面7 法隆寺
2015-04-04


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奈良より関西本線によりて西すれば法隆寺に到るべし。

法隆寺

法隆寺駅より数町。有名なる壁画はその金堂にあり。また寺内の夢殿は聖徳太子の薨逝せられし処なり。

安田靫彦

つばくらめあしたの原をかけり来て斑鳩いかるが寺のふところに入る

風鐸のかすかに鳴れば春の月淡くもふるふ塔あららぎの上に

夢殿の秘仏は今しとざされぬ扉にのこるまぼろしのゑみ

佐佐木信綱

薄き日は壁画に匂ふなつかしき慈眼にすがり泣かまくほしき

間島弟彦

桃散るや築地ついぢの垣のうすじめり雨になりゆく春の夢殿

補録

下河辺長流

夜といへばねられぬ恋も故やあると夢殿にこそきかまほしけれ

五重塔をあふぎみて
会津八一

ちとせ あまり みたび めぐれる ももとせ を ひとひ の ごとく たてる この たふ

夢殿の救世観音に

あめつち に われ ひとり ゐて たつ ごとき この さびしさ を きみ は ほほゑむ

夢殿秘仏
中村憲吉

われ等来つる靴のおとのみ甃石いし道みちのくさ霜枯れし夢殿の庭

佐藤佐太郎

夢殿をめぐりて落つる雨しづくいまのうつつは古いにしへの音

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[和歌名所めぐり]

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