和歌山市より東南にあり。
和歌の浦に潮満ち来れば潟をなみ蘆べをさして鶴たづなき渡る
若のうらを松の葉ごしにながむれば梢によするあまの釣舟
和歌の浦にあり。
玉津島見れどもあかず如何にして包みもて行かむ見ぬ人の為
一むらの州崎の松にかげわけて内外うちとの海の月をみる哉
白浪のよするなぎさに大御輿みたゝせりけむ古へ思ほゆ
ゆく年は波とともにやかへるらむ面がはりせぬ和歌の浦かな
和歌の浦や沖つ潮合にうかび出づるあはれ我が身のよるべ知らせよ
和歌の浦のちぎりもふかし藻塩草しづまむ世々をすくへとぞ思ふ
なびかずは又やは神に手向くべき思へば悲し和歌の浦浪
あはれはや浪をさまりて和歌の浦にみがける玉をひろふ世もがな
この国はことばの海のおほ八島いづくによるも和歌の浦波
年ふれど老いもせずして和歌の浦に幾代になりぬ玉津島姫
人問はば見ずとや言はむ玉津島かすむ入江の春のあけぼの
三代みよまでにいにしへ今の名もふりぬ光をみがけ玉津島姫
ささがにの蜘蛛のいとすぢ代々かけてたえぬ言葉の玉津島姫