中の海と宍道湖との間にあり。駅より北半里に松江城址あり。
出雲富士はつかにかかる雲を見て旅の夕べをさびしみにけり
松江駅の西十町にあり。周囲十一里半、碧雲湖の名あり。湖中、嫁が島あり。
朝ぼらけ碧みどりの雲の湖うみとほく浪よりあくるながめ涼しも
湖に夜釣のともしうるむまで立ちてをあれど見るにあかなく
出雲なる松江の鱸すずき秋風に姿を見せて立てるしら波
月夜ふけぬ八雲の文ふみに聞きし音、松江大橋を渡りゆく音
橋多き松江の街まちをゆきにけり人力車夫じんりきしゃふとものを云ひつつ
あかあかと午後の日射すはそのむかし八雲住みたる家の塀かも
日本につぽんの人となるまでこの美はしき国土くぬちを愛でしそのこころはも
みづうみの水のけぶりに啼きしきる千鳥よ城の春もおぼろに
夏来たる山の光りををちこちに青空ひろきみづうみの国
雨はれて二日照れどもひろびろと宍道しんじの湖うみはいまだ濁れり