和歌歳時記:韓藍(からあゐ) 鶏頭(けいとう) Cocks-comb
2010-08-30


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  『万葉集』巻十(秋相聞) 作者未詳
恋ふる日のけながくしあれば我が園の韓藍の花の色に出でにけり

  『六百番歌合』(恋) 藤原季経
韓藍のやしほの衣いろふかくなどあながちにつらき心ぞ

  『続古今集』(寄衣恋のこころを) 藤原良経
わが恋は大和にはあらぬ韓藍のやしほの衣ふかくそめてき

  『土御門院御集』(草名) 土御門院
いくしほもおのれが染むる色ぞかしなど紅の韓藍の花

  『為家千首』(恋) 藤原為家
韓藍のやしほのころも古りぬとも染めし心の色は変はらじ

  『風雅集』(題しらず) よみびとしらず
韓藍のやしほのころも朝な朝ななれはすれどもいやめづらしみ

  『草根集』(増思恋) 正徹
書きやらむ思ふ心の下染はなほから藍のやまとことのは

  『春夢草』(初春) 肖柏
空は今朝からあゐ染を敷島のやまとの春に立つ霞かな

  『左千夫歌集』 伊藤左千夫
鶏頭のやや立ち乱れ今朝や露のつめたきまでに園さびにけり

  『長塚節歌集』(病院の門を入りて懐かしきは、只鶏頭の花のみなり)
鶏頭は冷たき秋の日にはえていよいよ赤く冴えにけるかも

  『佐保姫』 与謝野晶子
秋立つや鶏頭の花二三本まじる草生に蛇うつ翁

  『太陽と薔薇』 与謝野晶子
鶏頭は憤怒の王に似たれども池にうつして自らを愛づ

  『桐の花』 北原白秋
ひいやりと剃刀(かみそり)ひとつ落ちてあり鶏頭の花黄なる庭さき

  『鹿鳴集』 会津八一
あさひ さす しろき みかげ の きだはし を さきて うづむる けいとう の はな

(2010年9月3日加筆訂正)


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