(写真は復原された平城宮朱雀門。Railstation.netより転載)
あをによし奈良の都は咲く花の匂ふが如く今さかりなり
白がねの目貫めぬきの太刀をさげはきて奈良の都をねるは誰が子ぞ
余りたる餌をかひとれば夕ぐれの旅人われによりくる四五匹
奈良人形夜寒の店の電燈にかがやく箔のみやびたるかな
陽を浴びて落葉の庭にさびれ立つわが大寺のいたましき秋
幾千年かくて黙して大寺の滅びむ果の秋の日を思ふ
奈良の秋落葉しげきにとほつ代のをとめもかくや物を思ひし
奈良の東方九町。
我妹子わぎもこがねくたれ髪を猿沢の池の玉藻と見るぞ悲しき
猿沢の池の青柳少女をとめさび遠つ采女のすがたおもほゆ
沫雪のほどろほどろに降りしけば奈良の都し思ほゆるかも
ふるさととなりにし奈良の都にも色はかはらず花は咲きけり
奈良の京にまかれりける時に、やどれりける所にてよめる
み吉野の山の白雪つもるらし古里さむくなりまさるなり
大和に侍りける母みまかりてのち、かの国へまかるとて
ひとりゆくことこそ憂けれふるさとの奈良のならびて見し人もなみ
いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな
いにしへの幾世の花に春暮れて奈良の都のうつろひにけむ
いにしへをみきのつかさの袖の香や奈良の都にのこる橘
猿沢の池もつらしなわぎもこが玉藻かづかば水もひなまし
猿沢の玉藻の水に月さえて池にむかしの影ぞうつれる
底ふかき思ひやのこる猿沢の池のほたるの玉藻がくれに