佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』大阪神戸附近8 和泉国(浜寺〜信田の森)
2015-05-13


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写真は葛葉稲荷神社の和泉式部歌碑。

浜寺

堺市南方の松原。むかし高師の浜といへりき。

渡辺重春

わたの原うかべる船の真帆片帆ちる花なせり海上にはをよろしみ

信田しのだの森

和歌山線葛葉駅より見ゆ。

(水垣注:現在、信太森葛葉稲荷神社へはJR阪和本線北信太駅が最寄りである。西二百メートルほど。)

大江匡房

おもふこと千枝にや茂き呼子鳥信田の森のかたに鳴くなり

補録

浜寺・高師の浜

置始東人

大伴の高師たかしの浜の松が根を枕まきて寝ぬる夜は家し偲はゆ

紀貫之

沖つ浪たかしの浜の浜松の名にこそ君を待ちわたりつれ

祐子内親王紀伊

音に聞く高師の浜のあだ浪はかけじや袖のぬれもこそすれ

式子内親王

よる波もたかしの浜の松風のねにあらはれて君が名もをし

信田の森

和泉式部、道貞に忘られて後、ほどなく敦道親王にかよふと聞きて、つかはしける

赤染衛門

うつろはでしばし信太の森を見よかへりもぞする葛のうら風

返し
和泉式部

秋風はすごく吹くとも葛の葉のうらみがほにはみえじとぞ思ふ

藤原保季

過ぎにけり信太の森の時鳥たえぬしづくを袖に残して

伏見院

夕立の名残り久しきしづくかな信太の杜の千枝の下露

吹飯ふけひの浦

大阪府泉南郡岬町あたりの沿海。大字深日ふけの名は「ふけひ」からの転訛であろうか。『万葉集』の歌により「時つ風」「沖つ風」などと共に詠まれることが多い。深日港へは南海多奈川線深日港駅下車。なお紀伊国の歌枕「吹上の浜」の異称として用いられることもある。

作者未詳

時つ風吹飯の浜に出で居つつ贖あかふ命は妹が為こそ

藤原清正

天つ風ふけひの浦にゐる鶴たづのなどか雲居にかへらざるべき

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[和歌名所めぐり]

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