写真は葛葉稲荷神社の和泉式部歌碑。
堺市南方の松原。むかし高師の浜といへりき。
わたの原うかべる船の真帆片帆ちる花なせり海上にはをよろしみ
和歌山線葛葉駅より見ゆ。
(水垣注:現在、信太森葛葉稲荷神社へはJR阪和本線北信太駅が最寄りである。西二百メートルほど。)
おもふこと千枝にや茂き呼子鳥信田の森のかたに鳴くなり
大伴の高師たかしの浜の松が根を枕まきて寝ぬる夜は家し偲はゆ
沖つ浪たかしの浜の浜松の名にこそ君を待ちわたりつれ
音に聞く高師の浜のあだ浪はかけじや袖のぬれもこそすれ
よる波もたかしの浜の松風のねにあらはれて君が名もをし
和泉式部、道貞に忘られて後、ほどなく敦道親王にかよふと聞きて、つかはしける
うつろはでしばし信太の森を見よかへりもぞする葛のうら風
秋風はすごく吹くとも葛の葉のうらみがほにはみえじとぞ思ふ
過ぎにけり信太の森の時鳥たえぬしづくを袖に残して
夕立の名残り久しきしづくかな信太の杜の千枝の下露
大阪府泉南郡岬町あたりの沿海。大字深日ふけの名は「ふけひ」からの転訛であろうか。『万葉集』の歌により「時つ風」「沖つ風」などと共に詠まれることが多い。深日港へは南海多奈川線深日港駅下車。なお紀伊国の歌枕「吹上の浜」の異称として用いられることもある。
時つ風吹飯の浜に出で居つつ贖あかふ命は妹が為こそ
天つ風ふけひの浦にゐる鶴たづのなどか雲居にかへらざるべき