佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』東海道線7 伊豆七島
2015-02-18


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伊豆の海

藤原為道

伊豆の海や沖の波路の朝なぎに遠島きえてたつ霞かな

小山田与清

物もなく沖はれわたる朝なぎになほ霞みけり伊豆の七しま

若山牧水

伊豆の海や入江入江の浪のいろ濁り黄ばみて秋の風吹く

大島

伊豆半島の東方沖にあり。山を三原山といふ、火山なり。

木下利玄

炭やきの翁の小屋に水こひて半はわかぬ物がたりきく

高柳光寿

大島や三原の山の麓辺は桜椿のいま盛なり

白煙は渦巻き登るひさかたの天つ日影は光あやふし

火の島のつら〓〓椿つら〓〓に物をぞ思ふ人の子故に

南みんなみの孤島の春の磯山にわれ手をとりて脈拍をきく

佐佐木福太郎

きさらぎの三原の山の御神火の本土になびく朝ごちの空

八木善文

花もりの神ここにすみてとことはに椿にほへる大しま島山

うみにそふふもと焼原雨になりて三原の煙ひくく舞ひくだる

船にあまる大帆はなゝめ船なゝめとぶ鳥なして黒潮よぎる

島少女何かかたらふ島つばき花ちるかげに牛をつなぎて

切割のこけの岩みち土の香のしめれる道のひなぎくの花

親しうなりし島の誰彼まさきかれと船に寄りきぬ椿手に〓〓

八丈島

伊豆七島のうちの最南の島。

八木善文

八丈男子をのこ妹がりゆきぬ魚さへも鰭破るとふ荒海月夜

補録

伊豆の海

文永二年の春、伊豆山にまうでて侍りし夜、くもりもはてぬ月いとのどかにて、浦々島々かすめるをみて

宗尊親王

さびしさのかぎりとぞ見るわたつ海のとほ島かすむ春の夜の月

加藤枝直

となりには初島みえて七島は潮気にくもる伊豆の海ばら

七月廿八日、浜臣が熱海へゆあみに行くを送る
加藤千蔭

いかばかり心ゆくらむ伊豆の海や浪にうつろふ月の夜ごろは

根本浜遠望
長塚節

伊豆の海や見ゆる新島三宅島大島嶺は雲居棚引く

若山牧水

皐月の雲のかげりにうすき藍をひきうすき藍ひき伊豆が崎が見ゆ

伊豆大島

与謝野晶子

数知らず伊豆の島より流れくる椿の花と見ゆるいさり火

九条武子

大島はそらになづめりかなたにも夕ベせまれば水くむやをんな

木下利玄

牛ひきてかへる少女に路とひて島の言葉を又おぼえけり

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